滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
それじゃ良くないってのはわかってるつもりなんだけどそれって結局、
褒めてくれたり努力を認めてくれて、
気にかけてくれる相手がいるからこそ頑張れるような、
単なる自己満足のような感覚なのかもしれない。
「…っ、そろそろ戻ろうかな」
いたたまれない自分の姿が何だがどんどん虚しくなってきて、
私は蛇口を捻り水を止めた。
その時、ガチャと外から扉が空いて一人の人間が中へ入ってきた。
「大丈夫?」
そう私に声をかけてきたのは、彼だった。
「…大丈夫です。今そっち戻ります」
「…」
彼と目線から逃げるように目を合わせず、俯いたまま横を通り過ぎようとした時、
突然手首を掴まれそのまま壁にドンッと押さえつけられた。
「なっ…、ん!」
そして両手で私の頬を包み込み固定したまま、強引にキスをしてきたのだ。