滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
ーーそんなムッとしながら言われても…。
正直私も飲み会には乗る気じゃなかったけど、
周りがせっかくだからと言うので渋々参加した。
座る位置だってたまたま俊介が隣に座っただけで、
その裏で何があったかなど知る術もないのだ。
「奈緒子さんの近くにいないとダメなんだ。奈緒子さんが手の届く距離にいて、触れられる位置じゃないと」
苦しげに囁く彼の声が胸をギュッと締め付けてきた。
年下のくせに私より説得力があって仕事が出来て生意気なくせに、
時折見せる少年のような純粋無垢の心で訴えてくる彼が時々、愛おしく感じてしまう時がある。
まるで母性本能を擽られるような感覚だ。
「奈緒子さん」
ちゅっと音をたてながら唇が額に触れる。
瞼、鼻の頭、頬、そして最後はーー。
「ん」
そっと唇に触れるだけの甘いキス。
「…もう、行かなきゃ」
「ヤダ。もうちょっとこうしてたい」
ギュッと抱きしめてきた彼の腕の中は驚くぐらい心地よかった。