滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「じゃ今日はお疲れ様〜!」
夜十時。
結局三時間程飲み合い、
明日も朝から仕事がある為キリのいいところでお開きとなった。
「二次会行く人〜っ!」
まだまだ調子のいい同僚の一部がにわかに騒ぎ出す。
「夏目さんもどう?カラオケらしーよっ」
「私はもう帰るよ、ちょっと飲み過ぎちゃったし…ごめんね」
元々大人数で騒ぐのは好きじゃない私はその輪に入る事すら少し躊躇してしまう。
ーーでも確かに飲み過ぎたからなぁ…。
早く帰ってゆっくりしよ。
その時、夏目さんと声をかけてきたのは彼だった。
「体大丈夫ですか?大分飲んでたから…」
その顔は部長の仮面をつけていて私も咄嗟に部下の仮面をつける。
「大丈夫ですよ。部長は二次会行かれないんですか?まだまだ元気そうだし」
「いえ、あまり騒がしいのは苦手で。良かったら…駅まで送りましょうか?夜道に女性一人は危ないでしょう」
わざとらしく話すと彼もニッコリ笑ってサラリと返してきた。