滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

誰かを探している俊介の耳に同僚の小話が入ってきた。



「ねー、部長と夏目さんってさぁ…」

「わかるわかる。やけに仲いいもんね…」

「?」




二人の同僚の視線の先が気になった俊介も同じように見つめると、

そこには私と彼が仲睦まじく話す光景があった。




「みんな、二次会行くけどどうする?」


俊介が背後から笑いながら声をかけると、二人は体をビクッと反応させて振り返った。




「あ、あたしたちは帰ります〜!」

「お疲れ様でした〜」




ハハハと慌てて逃げるように去って行っていく。



そして再び目の前の光景を眺めると、

そこには肩を並べて歩く二人の後ろ姿があった。






「……」







ジッと睨むように見つめるその目は、



普段温厚な俊介とは掛け離れた鋭い目つきをしていた。

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