滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

「貴方こそ、こんな場所にいるなんて意外だったわ」



仕事以外で会うのは初めてなせいか、内心ドキドキが止まらない私。




ファーがついたフードジャケットを羽織り細身のダメージデニムを履いていて、

最近はスーツばかり見ているせいか、
私服姿を見るとあの時の思い出が頭を過る…。





「ちょっとデパ地下に用があってさ」



彼はずっと外の風景を眺めながらポツリ。


ーーデパ地下…、惣菜とか買いに来たとか?





よくよく考えてみると、
私は彼のプライベートな部分は何一つ知らない。


旅行の時だって、いつもは私ばかりが話をしていて彼はあまり自分の事を話すことはなかった。



本籍はアメリカなのかな?

それともたまたまあの場所にいただけで、普段は日本で生活しているのかな…?





「あ、言っとくけど惣菜目当てじゃないから」

「べっ、別にそんなっ…!」



またもや心の言葉を読まれて、あからさまに慌てる私。

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