滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
ホント、彼って油断も隙も無いなぁ…。
「ねぇ、奈緒子さんこれから予定あるの?」
チラッと私を横目で見てきた彼。
ううんと答えると、じゃーさ!と元気よく椅子から立ち上がった。
「せっかくだから一緒にデートしようよ。ここで偶然出会ったのもきっと運命だし」
「ーーえ、今から!?」
「当たり前じゃん、何言ってんの」
「だって用事は…?」
「あー、それは後でいいや。別に急ぎじゃねーし!」
彼はそう言って私を急かすように早く早く!とまるで、駄々をこねる子供のように手を引っ張る。
私は彼に促されるように体を引っ張られ、
まだあったかい飲み物をその場に残したまま店を後にした。
「何処に行こうかなー?」
るんるん気分で楽しそうに声を弾ませる彼の隣を歩く私。
街中をこうやって男性と、
しかも会社の上司と歩くなんて思ってもみなかった。
ーー会社の人間に見られなきゃいいけど…。