滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

「カラオケとか?あ、ボーリングとかもいいな!奈緒子さんは何がいい?」

「私?…私は別に何でも…」




彼のテンションになかなかついていけない私に、
彼がムスッと不機嫌そうな表情を浮かべる。



「何でもいーならさ」





その瞬間、彼がいきなり私の腰に腕を回してきてグイッと全身を自分の体に引き寄せてきた。

そして目と鼻の先まで顔を寄せ、真顔でこう呟いた。




「ホテル行かない?」

「えっ!」




私は予想もつかなかった言葉に、目を丸くして赤面しながら驚く。


その吸い込まれそうな真っ直ぐの瞳に心臓が物凄い早さで鼓動を打っている。




しかもたくさんの人間が行き交う道端のど真ん中で男女がこんなに密着し合う光景なんて、

周りから見たらいい見世物に違いない。




「ちょっ、近い…!」



羞恥心が頭を駆け巡って彼から離れようとするが、
彼の力にも叶うわけもなく距離は縮まることはない。

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