滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
ーー七時かぁ…。
本屋でも行って時間潰そうかな…。
でもあまり遅すぎると、あそこの夜道暗いし人の気配ないからちょっと怖いんだよなぁ。
携帯で時間を確認してこれからの予定を頭の中で考えていると、
蒼が、よかったらご飯食べに行かない?と話しかけていた。
「悩んでることあったら聞くし、ね?」
ニッと笑ってみせた笑顔に心がほっこりと温かくなる。
もしかしたら蒼なりに、私の異変に何か気づいているのかもしれない。
だからこうやって残業にも付き合ってくれるのかな。
「…ん、ありがと」
変に自分が気を使うよりも、
甘える時に甘えた方がいいのかもしれない。
少なくとも蒼は私の味方でいてくれるよ、ね。
「じゃお言葉に甘えて」
「やったね!じゃ、奈緒子さんのおごりで」
「はぁ?言い出したのは蒼君じゃない!」
会社の前を二人歩きながら会話してるだけで、
先程の寒さなんか忘れるぐらい話に夢中になってる私がいた。