滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

「ーーそれ、奈緒子さんのストーカーじゃねぇの?」



意を決して夜の出来事を話すと案の定思った通りの答えが返ってきた。



少し洒落たカウンターバーで彼はモスコミュール、私はもちろん烏龍茶を飲みながら。



「やっぱりそうなのかな?会社にいても常に視線気になるし…」

「いや、だからそれは俺〜」

「冗談で言ってるんじゃないのっ!」



神妙な面持ちで話す私に蒼がイヒヒと笑いながら言うもんだから、
ムッと怒りながら蒼を睨み返した。




「ってことは、会社の人間ってことか。しかも同じ部署のやつ…とか」



同じ部署?と聞き返すと、酒を一口飲んだ後だってさ、と続けた。




「常に見られてるって事は相手が同じ空間内にいるってことじゃん?昼休みと退社以外はずっと同じオフィスにいるんだから」




必然的に考えて蒼の推理は確かにと思った。

ということは、
私の知り合いの中に後を付け回す人がいるってこと?

< 165 / 262 >

この作品をシェア

pagetop