滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

「じゃ俺も知る人間ってことか…」



ジッと前を見つめる横顔がいつになく真剣で、
思わず心臓がドキッ!と大きく動いた。



私より年下なのにすごく大人びていて、頼りがいがある。


最近では蒼に対しての胸の高鳴りや火照りが強くて、
出会ったとき以上に蒼のことを知りたいと無意識に思ってしまう自分がいた。





蒼の思いを知ってるからとか、自分の事を好いているからとかではなく、


それはただ一人の男性として魅力的だと感じるようになったからだった。




「…奈緒子さん?」

「ん?」




蒼が流し目で私を見つめる。


ドキドキしながら私も見つめ返すと、
膝の上にある私の手を上から重ねてきてギュッと握りしめてきた。




「変わった事あったらすぐ言ってよ?何かあったら遅いんだから」



冷静な表情をしたまま話す口ぶりとは裏腹に手はあったかくて、この温もりがとても心地いい。

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