滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
*揺れ動く思い*
すれ違いと零れた涙
「…ん」
ゆっくり瞼を開けると、目の前に見えたのは見知らぬ天井。
薄暗い部屋をぼんやりと照らすのは大きな窓から差し込む眩しいほどの月明かりだ。
「ベッド…?」
背中に感じた柔らかい感触。
それに裸だったはずの体にぶかぶかのトレーナーと下着にスエットが着せられている。
おもむろに起き上がると、ズキッ!と腰に激痛が走った。
「いたたた…」
「ーー起きたんだ」
上半身を起こしたまま腰を手でさすっていると、
カチャと部屋の扉が開き蒼が現れた。
「まだ寝てたら?痛いんでしょ」
「…っ!ほっといて」
ーー嫌がる私を無茶苦茶に抱いた人間が言う言葉!?
白々しく涼しい顔をして話す蒼に、
私はキッと睨んでベッドから降りようとする。
だが、立ち上がろうとした瞬間再び激痛に襲われ、足元のバランスが崩れてしまった。
「ーー危ない!」
倒れそうになった私を蒼が慌てて駆け寄り、
間一髪のところで抱き抱えてくれた。