滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
ーーガチャ…。
玄関のドアを開けると真っ暗な室内と冷たい空気が肌で感じた。
誰もいない部屋に帰ってくるのは今日が初めてじゃないのに、
どうしてか孤独感が一瞬で襲ってきた。
「…ただいま」
スエット姿に仕事用の鞄を肩にかけたまま、ヒールを脱いで室内へ。
電気をつけて目に入ってきた光景は、
一Kの小さな自宅。
さっきまでこの部屋の倍以上もある部屋にいたのが、まるで嘘のようだ。
「…お腹すいたな」
もう十一時過ぎてるのに夜食すら口にしていない私。
蒼の自宅からこのままアパートまで運んでもらったので、途中で買い物すら出来ない。
腰がズキズキと痛む体に鞭を打って冷蔵庫に手をかける。
「あ、何もなかったんだ…」
今日はクリスマス。
せっかくだから、仕事の帰りでも蒼を誘って食事にでもと考えていたことをふっと思い出したのだ。
「最悪…」