滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
背に腹は代えられないので、
棚にあった非常食、カップラーメンを食べることに。
お湯をやかんで沸かす間、ガスコンロの前にある小さな丸椅子に座って燃え盛る青い火をぼんやりと眺める…。
“もう、ダメかな”
ーー何がダメなの?
私のこと嫌いになった?
それとも別の意味があるのかな。
嫌な胸騒ぎがさっきから収まってくれない。
まるで何処か行ってしまいそうな、
手の届かない場所へ離れてしまいそうな、嫌な胸騒ぎだ。
家を出る時まで結局目すら合わせてくれなくて、
見送りにすら顔を出してくれなかった。
それはどう考えても私を避けているようにしか見えなかったのだ。
「気に障ることでも、言ったのかな…」
わかってる。
私の考えが理解出来ていないことは。
蒼の気持ちと私の気持ちにズレが生じてることも。
でも事を荒立てても頭のキレる俊介の事だから、
うまく丸めて何もなかったことにしてるに違いない。