滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「今日も休み?」
それから数日後。
世間は年末調整に追われまさに師走の忙しさへと変わる。
企画したケーキの売り上げも発表され、
見事に前年度の比率を大幅に更新し、過去最高の売り上げを記録した。
だが、喜ぶチームの中に肝心の蒼がいない。
部長の席はガランとしたままで、
蒼は今だに会社に出勤している気配すらなかった。
「部長、どうしたのかな」
「やっぱあんな事があったら、来にくいんじゃないのー?」
自分の席に座って仕事をしていると、
蒼の話をする声が地獄耳のように聞こえてくる。
「普段温厚な人がキレるとヤバイって言うじゃん〜」
「かっこいいけどそれやだなぁ」
はははと私の後ろを通り過ぎる同僚達に、
ついムッとした目つきで睨んでしまう私。
ーー何も知らないクセに、知ったような口ぶりやめてよねっ!
そう心の中で叫んでいると、
あの…と横から女性の声が聞こえてきて、すぐに表情を戻し振り返った。
「ちょっとお話しがあるんですけど…いいですか?」