滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
甘い罠には気をつけろ
眩しい太陽に真っ青に広がった空。
照りつける日差しがあまりにも痛くて、
私はサングラスをかけ上着を羽織った。
周りに見える光景は初見で右も左もわからない私は、
日本から持ってきたガイドブックをその場で開いた。
「えっと…、自由の女神はどっちだ?」
どこからどう見ても観光客の私。
周りにも似たような人達がいるが、皆仲間や相手と共に同じ時間を過ごしている。
でも私はたった一人。
話す仲間も頼る相手もいないので、
カタコトの英語とジェスチャーで何とか乗り切ってきた。
本来なら…あの人とくる筈だったのに。
楽しい海外旅行になるはずだったのに。
“奈緒子、ごめん。好きな子出来たんだ”