滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
それはあまりにも突然に
二0一五年。
新しい年が明けて世界中が歓喜に包まれる。
大晦日から実家に帰省していた私。
久しぶりに帰ってきた私に両親は温かく向かい入れてくれて、一緒に年越し蕎麦を食べた。
父親は思っていたよりもそんなに弱っている感じはなく、
店も三が日は休業だが四日からは通常営業するらしい。
それから数日だったある日。
店は通常通り開いて、親は仕事へ。
のんびり過ごすのも何なので、地元の友達に声をかけ、久しぶりに会おうかなと思っていた時、
店に出ていた母親がパタパタと仕事着の割烹着姿でリビングに顔を出した。
「奈緒子ー、お客さん来てるわよ?」
「客?」
ーー実家に帰るのは誰にも言ってないはずなんだけど…。
客の顔すら検討つかない私は、
不思議がりながらそのまま店の店頭に顔を出した。
「あ、どーも」
「そっ蒼君!!」
ニッと笑って手をヒラヒラと私に振る蒼に、
私は思わず驚愕してしまった。