滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
俯いていた私の目に入ってきた男性に革靴。
ーー蒼君!?
勢いよく顔を上げると、
そこには少し驚いた表情を浮かべた俊介が立っていた。
「どうしたの、そんな血相変えた顔しちゃって」
余裕のある笑みを浮かべて私を見下ろす俊介。
だが私はすぐに俊介から目線を外して記憶の回路を解き始める。
「今日、新年会と新しい部長の歓迎会を兼ねて飲み会しようかと思うんだけど、来るだろ?」
「ーー行かない」
「どうせ、予定ないんだろ?暇なんだからいいじゃないか」
「暇じゃないの、私の事はほっといてよ」
俊介のあからさまな白々しい口ぶりに苛々が募った私は、
その場から立ち去ろうと俊介の横を通り過ぎる。
その行動を俊介は鋭い目つきで追いかける。
「どうせ、暴行がキッカケで辞めさせられたんだろ?彼は!」
俊介が私の背中に向かって叫ぶ。