滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
コロコロ変わる姿に先程の不安など何処かへ吹っ飛んでいった。
「アメリカやめてこっちに住むわ。んでそのまま奈緒子さんに居座る!」
「はぁ!?」
ーー居座るだって!?!?
いきなり何を言い出すかと思えば、
全くもって理解出来ない言葉を口走ってきた蒼。
だが、本人は至って大真面目らしい。
「とりあえずここは今日までしか居られないから、明日からは奈緒子さん家で暮らすね」
「なっ何言ってんの!なんか狭くて一緒に何か暮らせないよ!」
「だーいじょうぶだって!奈緒子さんが仕事してる間はちゃ〜んと家事するからさ」
「そういう問題じゃないっっっ」
ガバッと起き上がり、パニックになりながら蒼を見下ろす。
あまりにも話が急展開過ぎてうまく整理が出来ない私を、蒼は不思議そうに見つめて起き上がった。
「奈緒子さん…、俺のこと好きじゃないの?」
まじまじと見つめられながら言われて、
思わず顔を赤くして黙り込む。
「…そっか。そうだよね、俺なんかやっぱりダメだよな…」
この世の終わりのような、意気消沈した様子でボソッと呟く蒼。