滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
明らかに演技しているんだとわかっていても、
こう心の中がモヤモヤして…。
「…きだよ」
「俺なんか…ダメだよな…」
「好きだよって!」
「もう終わりだよ…はぁ…」
「ーー蒼君が好きだよ!!」
赤面しながら、もうどうにでもなれ!とヤケクソで言った告白。
それは恋愛小説のような、
ロマンチックで誰もが憧れるような乙女心をくすぐるものとは全く微塵も感じさせない、
ただ場の雰囲気に流されてしまった愛の告白だった。
「それ、マジだよね?」
「う、うん」
ギラッと睨まれたまま両腕をサイドからガシッと掴まれ、
体を一瞬ビクつかせ背筋をピンと伸ばした状態で答えた。
「…」
数秒、瞬きもせずにジッと見つめてくる蒼に、
胸の高鳴りが徐々に大きくなってくる。
ーーた、試されてる?私。
何も言わないところを見ると、
もしかしてまた私の心を見透かしてる、とか?