滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
私の仕事は何も変わることがなく、
事務作業とお茶汲みという昔同様の勤務に戻った。
新しい部長にはチームから抜いて下さいと直談判した。
たしかにみんなで一つのものを一から作る工程はやりがいもあったし、楽しかった。
でも私にはそんな華やかな舞台よりも、
裏方でひっそりと仕事をすることの方が合ってると身に感じたのだ。
俊介とはもちろん、今まで通り同じ部で働いている。
だが、明らかに変わったことが一つあった。
それは…。
「藤堂さん、コーヒーどうぞ」
同僚のコーヒーを配りながら、何気なく俊介の席に回ってくると俊介は私を一瞬だけチラッと見て、
ありがとう。と礼だけ言って、
それはまるで怯えるように私を避けるようになったのだ。
だが、周りには相変わらず出来る人間ぶっているが、
何故か私の前では態度を一変させ、萎縮してしまう傾向にあるようだ。
私も俊介に対して何の関わりを持とうと思わない分、
俊介も私同様に感じているのかもしれない。
もしまた何かしてくるようなら、
今までしてきた仕打ちを全部公表して、会社にいられなくなるようにしてやるんだから。