滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

「いいわねぇ、幸せそうで〜」



会社の休憩室。


丸いテーブルを挟んで、そう話すのはハァ〜と深いため息をついて頬杖をつくあずさだ。



一連の騒動や今の生活を唯一知るあずさは、
今も連日合コンの日々を送っているらしい。



「真壁部長にいい男紹介してって話つけてよ〜」



とりあえずあずさには本来の蒼を教えておらず、
あくまで部長、真壁蒼と付き合っている。という事になっている。



「でもあの部長が主夫になるなんて…、想像つかないわぁ」



きっと完璧過ぎた当時の蒼のイメージが今だに忘れられないのだろう。


はははと愛想笑いしながら、
時々心苦しいときがあるけど。




「あ、聞いた?奈緒子と同じ部の子、えっと…ほら、奈緒子の事つけ回っていた子!」

「あぁ、それがどうしたの?」

「結婚するんだってよ!うちの部にいるイケメンと!!」

「そうなんだ!」



てっきりまだ俊介と続いているのと思っていたが…。





「また一人、私の元からイケメンが去って行く…」

「何ふざけたこと言ってんの」




悟りを開いたようなあずさの口調に思わず冷静なツッコミ。

< 249 / 262 >

この作品をシェア

pagetop