滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「いいわねぇ、幸せそうで〜」
会社の休憩室。
丸いテーブルを挟んで、そう話すのはハァ〜と深いため息をついて頬杖をつくあずさだ。
一連の騒動や今の生活を唯一知るあずさは、
今も連日合コンの日々を送っているらしい。
「真壁部長にいい男紹介してって話つけてよ〜」
とりあえずあずさには本来の蒼を教えておらず、
あくまで部長、真壁蒼と付き合っている。という事になっている。
「でもあの部長が主夫になるなんて…、想像つかないわぁ」
きっと完璧過ぎた当時の蒼のイメージが今だに忘れられないのだろう。
はははと愛想笑いしながら、
時々心苦しいときがあるけど。
「あ、聞いた?奈緒子と同じ部の子、えっと…ほら、奈緒子の事つけ回っていた子!」
「あぁ、それがどうしたの?」
「結婚するんだってよ!うちの部にいるイケメンと!!」
「そうなんだ!」
てっきりまだ俊介と続いているのと思っていたが…。
「また一人、私の元からイケメンが去って行く…」
「何ふざけたこと言ってんの」
悟りを開いたようなあずさの口調に思わず冷静なツッコミ。