滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
ーー結婚するんだ、彼女。
いろいろ苦労しただろうから、
ぜひとも幸せになってもらいたいな。
そう素直に願えるのは、きっと同じ痛みを経験したからこそだと思う。
私が今そうであるように、
彼女には俊介ではない別の運命の人がいたのだ。
「さー、私そろそろ行くわ。今日も合コンの予定あるからちゃっちゃと仕事終わらせないと。じゃーね」
「精が出るね〜。いってらっしゃい」
イスから立ち上がり背伸びしながら去って行くあずさに、私は余裕の笑みで見送った。
「私もそろそろ戻ろう…うっ!」
その時、突然吐き気が襲ってきて、
私は口を手で押さえながら慌てて近くのトイレに駆け込んだ。
そして個室に入り便座に前のめりになったまま大きく咳払いする。
「何だろ…」
思い起こせば、最近やたら体が熱っぽく生理の時のようなだるさが多い。
風邪でもなければ、
何処か痛むような感じもない。
「…」
その時、女の直感が閃いた。
ーーまさか、まさかね…。
でも思い当たる節があり過ぎて、
どんどん窮地に追い込まれていく…。
今月、生理が遅れていることに、
今更ながら疑問を抱いた。