滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

「…まだ蒼君だってやりたいことたくさんあるよね。ごめんね、私がこういうことはしっかりしてないといけなかったのに」



今更謝っても後の祭りなのはわかっている。


だが、蒼の気持ちの整理を待つことも大切だ。





「まだはっきりと確定したわけじゃないし、今度の休みにちゃんと病院行ってくるよ。そこで…、色々聞いてくるから」



私はポロポロと泣く蒼を宥めるように話した。



しかしその瞬間、蒼がいきなり抱きしめてきて、
それは息が出来ないぐらいに強い腕の力だった。




「ちょっ、苦し…」

「ーーもちろん産んでくれるよね?」




腕の中で聞いた言葉に一瞬耳を疑った。




「俺と奈緒子さんの子供、もちろん産んでくれるでしょ?」



抱きしめる腕が少し緩むと、
私は驚いたまま蒼を見上げた。



「どうして謝るんだよ、悪いことなんか何もしてねーじゃんか」

「だって…。泣いちゃったからてっきり嫌なのかと…」

「嫌なわけないじゃん。すげぇ嬉しい」



まだ涙目の蒼が嬉しそうに笑った。



「嬉しい、嬉しいよ…!こんな幸せなことあんのかってぐらい」

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