滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
蒼が零した涙は嬉し涙だった。
新しい命が生まれたことに対しての、
感激の涙だったのだ。
「蒼君…」
まさか喜んでくれるとは思わなかったので、
その安堵感から今度は私がポロポロと涙を零してしまった。
「俺頼りないけど、頑張っていい父親なる。奈緒子さんもたくさん愛して子供もたくさん愛するよ」
その言葉は父親なる自覚と責任をしっかりと持てた決意だった。
どんな状況になったとしても、蒼がいてくれるなら家族を守ってくれる。
幸せにしてくれるんだと改めて実感出来た。
「これからは俺も必ず病院行くよ。父親として当然のことだし、早く子供に会いたいしさ」
そう言ってくれるだけで、
どれだけ救われることか。
「蒼君…、ありがとう」
一つの命が生まれたおかげで、
二人の絆がより一層強くなった気がする。
これからの長い道のり、
蒼君となら一緒に頑張れるよ。
「奈緒子さん」
「何…?」
「順番、逆になっちゃったけどさ…」
蒼の両手が私の頬を優しく包み持ち上げる。
そして照れ笑いしながらこう言った。
「結婚しよう」