滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
その次の休みの日、
私達は早速病院に言って検査をしてもらった。
案の定妊娠していて、すでに二ヶ月に入っていた。
まだまだ小さい子供のエコー写真を見る蒼の顔は、
すでに子供に甘くなりそうな父親の顔をしていた。
「何か、変な感じだね」
「何がよ?」
「んー?だって自分の体に赤ちゃんがいるなんてさ。全然実感湧かないや」
病院の帰り道、手を繋ぎながらのんびりと歩く。
春の南風が柔らかくて心地よくて、
ついつい眠くなってくる。
「お腹大っきくなってからじゃねーの?俺もいろいろ勉強しなくちゃ!」
うんうんと一人で意気込む蒼が何だが可愛らしく見えてきて、
ふふふとついつい笑ってしまった。
「何で笑うんだよ!子供生まれたら、こう抱っこしてさ!んでよしよし〜ってあやすんだぜ?」
「やたら詳しいんだね?」
「昨日バイトの帰り、本屋でたまごクラブ買ってきたし!」
「えぇ!?蒼君も!?」
「ぁああ!?奈緒子さんもかよ!!」
こうやって二人の共通の話題が一つ二つと増えていく。
これもまた小さな幸せだと感じられることが無性に嬉しくなった。