滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
そして一番の試練。
それは妊娠と結婚の報告を親にすることだ。
「めっちゃ緊張すんな…」
「大丈夫?」
ビシッと決めた黒いスーツに身を包み、実家の玄関前で小さく息を吐く蒼。
一応事前に電話では、話したいことがあるからと通してあるつもりだが、
いざとなると蒼の緊張がこっちまで移ってしまう。
「大丈夫。俺が全部話すから、奈緒子さんは黙ってて」
凛とした表情はいつになく頼もしく見えて、ついつい胸がキュンと熱くなった。
そして玄関を開けて家の中へ入った。
蒼は両親に全てを打ち明けた。
妊娠、結婚。
そしてこれからの生活設計。
初耳の事ばかりで両親はただ驚く事しか出来ない様子だった。
いきなり突飛押しもない事を言われ動揺するのは無理もない。
でも私達の強い気持ちを伝えることで、
両親も真剣に耳を傾けてくれた。