滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
次の瞬間、彼はギュッと強く抱きしめてきて、
耳のすぐ近くで切なげに言葉を発した。
「あんたの事、ほっておけねーんだよ。危なかっしくて」
彼の腕の中で赤面し呆然とする私。
だが、抱きしめる腕はさらに強さを増していく。
ドサッ。
そのまま後ろに押し倒され覆いかぶさる状態になり、
私はドキドキしながら目を見開き彼を見上げた。
「嫌なら本気で拒んで。拒まないなら俺は奈緒子さんを抱く」
目と鼻の先にある目線は、
冗談半分で言っているような雰囲気などさらさらない。
しかし哀愁漂うような寂しげな瞳が何故か切なくて、
私はどうしても彼を拒むことはできなかった。
「…優しくしないって約束出来る?」
「鬼畜にはなれないけど、努力する」
ゆっくり彼の顔が近づいてきて、
目を閉じると柔らかい唇がそっと触れた。