滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
別れた代償
ーー十月下旬。
朝晩の気温が一気に下がり冷え込むようになってきた。
出勤や退社の時間になると冷たい風が吹き込み、
首にはストール、手には手袋がかかせない時期になってきた。
「じゃ、これコピーして資料作成しといて」
「わかりました」
上司に頼まれた紙束を受け取り、
自分の席へ戻る。
都内に建つ大手洋菓子メーカーに勤める私。
開発部にいながらも、
主に一般事務で書類整理なら電話番やらお茶汲みやら。
一線で活躍するような仕事を任されたことはなく、
悪い言い方をすれば頼まれた雑用をこなす腰掛けOLみたいなものだ。
「藤堂さん、これちょっと目を通してもらっていいですか〜」
甘ったれるような女性社員の声。