滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
書類をまとめながら声の矛先を横目でチラリ見ると、
Tシャツに上からシャツを羽織り、下はGパンを履いたラフな私服姿の一人の男性に、
女性社員がにやけ顔で話してる光景があった。
「うん、いいんじゃないかな?」
爽やかな笑顔で女性に書類を返す人間。
ーーそう、彼こそが藤堂俊介。
私の元カレだ。
様々な商品を生み出し、
部下や上司からの信頼も厚い。
今も新しい商品開発のプロジェクトチームの長を任されていて、日夜忙しく仕事をこなしているみたいだ。
「あ、夏目さん」
その時、背後から俊介がさりげなく声をかけてきた。
「十分後会議室でミーティングあるから、コーヒー頼んでもいい?」
「はい、わかりました」