滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

あっけらかんと話すあずさに、私は無表情で食を続ける。



「奈緒子のことだからまだ引きずってるのかと思ってたんだけど、そうでも…なさげ?」

「っていうかね、いちいち二言三言交わしたぐらいで、元カレと話した気分はどう!?とかくだらないメール送るのやめてよ。誰かにハッキングされて見られたらどうするのよ」

「ちゃんと削除してるんでしょ?なら大丈夫じゃない」

「削除してもパソコンの中にはデータとして記憶されてるから、ちょっと弄っただけで簡単に復元されるの。去年だって部長の不倫メール社内に出回ったじゃない」

「あー、そういえばそんなことあったわぁ」


はははと笑ったあずさの元にも、
別のランチメニューが運ばれてきた。



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