滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「藤堂さんといい勝負できるぐらいイケメンなのかなー?」
ふふふと嬉しそうに話すあずさを呆れ顔で見つめながら、
私は再び手を動かし始めた。
ーーイケメン…か。
“奈緒子さん”
「ん?ちょ、ちょっと〜何顔赤くしてるのよ」
「ーーえっ!?べ、別に何でもないよ!」
自分でも気づかなかったぐらい顔がいつの間にか赤くなっていて、
私は残っていた慌ててお冷を一気飲みした。
頭によぎったいつしかの彼を思い出しただけなのに、
体がカッと燃えるように熱くなった。
帰国してからもうだいぶ経つのに今だに忘れられない記憶。
あの日の出来事は夢物語だったんじゃないかと錯覚してしまうほど、
私の中には鮮明に焼きついていた。