滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
その時、くるりと体を回転させて彼は要約私に顔を見せてくれた。
「…」
黙って私を見つめるその視線は、
まるで私を哀れむ目で見ているような感覚だ。
「まだ好きなんでしょ?元カレ。奈緒子さん見てたらすぐにわかった」
「ーーべ、別に、私はもう…!」
また私の心を簡単に見透かされ、
ドクンッと心臓が大きく飛び跳ねた。
目を泳がせながら動揺する私に、
彼はハァと小さくため息ついて髪をかきあげた。
「つか、めっちゃ動揺し過ぎなんだけど」
口をへの字に曲げつまらなそうに呟く彼の言葉が私の頭の中を更に掻き乱していく。
「彼のことは何とも思ってないし!寧ろ、全部忘れたいぐらい…!」