滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「知り合い。まぁ…、そんなもんかな?」
余裕の不適な笑みを浮かべて話す彼には、悪びれた様子すらなく、
むしろ挑発的な表情を浮かべていた。
「あんな別れ方をする奈緒子さんが悪いんだよ?置き手紙なんて卑怯だ」
「だって…」
私は気まずくなり思わず目線を落とした。
あの時はその関係で私は充分だった。
ぽっかりと空いた穴を何でもいいから埋めたかった。
寂しさから逃れるように彼を受け入れたのは、どう見ても私のワガママだと思ったから…。
「奈緒子さんが帰ってから、悪いと思ってたけど財布の中にある免許証頼りに会いに行こうと探してたら、ここのIDカードがあってさ」