滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

その一言に、私は一瞬不安が過った。




もしかして私の財布をあえて返さなかったのは、
個人情報を抜き取るため…?



「あ、今さ、財布から個人情報を盗み出そうとしたからあえて財布返さなかったんじゃ…って思ったでしょ?」

「ーーなっ!」

「図星〜」




プッと吹き出して声を出して笑う彼に三度も心の中を読まれるとは!


そんなに私わかりやすいのかな…。





「ホントはね、…あのホテルにいたのは奈緒子さんに財布を返そうと思ったからなんだよ」



さっきまでの陽気な笑い方から一変して、
彼はコロリと寂しげな顔つきに変わる。




「返すつもりだった。で、ダメ元で連絡先…とか聞けたらなって内心思ってた。あの事を聞くまでは」

「あの事?」


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