千紫万紅~君と見たい景色~
「木山がどうして……」




まさか悠晴が自分に対してそこまで思ってくれているとは和咲は知らなかった。


でも和咲には理由が分からない。



「大切に思ってくれているんじゃないの?それに和咲も。貴女が男の子と帰るなんてこと無かったし。」



藍は悠晴が和咲を好きだってことはすぐに分かった。


しかし、そういうことは本人が言うべきだと思って藍は言葉を濁す。


まぁ、ここまで言われて気付かないのは、自分には縁のないことだと思っている和咲本人ぐらいであるが。



「私達も驚いたのよ。でも嬉しかったわ。貴女は一歩引いている時が多いから。」



「私達もねぇ、悠晴君の話を聞いて思ったんだよ。確かにって。甘えていたかもしれないね、和咲が私達に心配かけないようにしてくれていたから。」



「それは当然だと思っていたから……」



雷と霞に言われるが、和咲にとって心配をかけないようにするのは当たり前のことだった。


倒れれば、その介抱をするのは園か学校の人ということになるのだから。
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