赤い流れ星
「は、はい。」

私は水の入ったバケツを持ちあげ……



「ちょ…ちょっと、話はまだ終わってないんだってば!」

肝心なことを思い出した私は再びバケツを床に置いた。



「なんだ?
面倒臭い奴だな。
用があるなら、さっさと話せよ!」

不機嫌な顔をして、シュウは椅子に腰掛けた。
私はなるべく顔をあわせないようにして、向かいに腰掛けおずおずと話を始めた。



「あのね…シュウっていうのは、私の考えたオリキャラなの。
つまり…私の妄想の産物で、現実には存在しない人なの。
…………ひっ!」

そう言った私は、不意に手を握られおかしな声を出してしまった。



「ほら、存在してるだろ?
俺の体温とか…脈だってちゃんとある。
触ってみろよ。」

私はその手を払い除けた。



「もしかしたら、この会話すべて私の妄想かもしれない。
私……そんなに酷いことはないけど、ちょっと心に病気があるみたいだから…
一人で暮らしてるうちにそれが悪化して……」

そこまで話すと、シュウは大きな口を開けて笑い始めた。
至って真面目に話してた私は、その笑いの意味がわからず、呆然とするしかなかった。



「あのな……それだけ冷静に考えられるんだったら、病気じゃないって。
だいたいな、今の世の中、心の病気に敏感になりすぎてるんだ。
誰だって、調子の悪い時もあれば元気な時だってある。
そんなのに病名をつけたりするから、事が大きくなるんだよ。
こんな良い環境の所で好きなように暮らしてたら、病気が悪化することなんてないって。
だいたい、おまえ、そんな柄じゃないだろ?」

「が、柄じゃないって…」



あぁぁ…なんて失礼な奴なんだろう!
そりゃあまぁ確かに、どう見たって私に繊細なイメージはないかもしれないけど…
それにしたって、そんなはっきり言わなくても…
あ、そんなことより…



「それじゃあ、シュウは現実にここに存在してて、私は病気でもなくて……
それって、どういうことなの?
私にわかるように説明してよ。」

「それは俺にも説明出来ない。」

「へ?」

「俺だって突然こんな所に連れて来られて、何がなんだかわからなかったよ。
ただ…すぐにわかった。
ここがひかりの家だってこと。
それは……嬉しかった。
正直言って不安もいっぱいあるにはあったけど、ひかりと一緒に暮らせるなら、ま、そんなことはどうでも良いかって気分になって…」

聞いてるうちに、私の顔がどんどん熱くなっていくのを感じた。
多分、今、私の顔はトマトみたいに真っ赤になってるはずだ。
そ、そんな恥ずかしいこと、なんでそうさらっと言えるんだ?
しかも、そんなかっこいい顔で…!!
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