赤い流れ星
「そうだったんですか…
じゃあ、ひかりの誤解だったですね…」

「誤解も甚だしい!全くあいつって奴は……
それにな……似てないとは言われてたが、仲は良かったんだぞ。
とにかく俺はあいつのことが可愛くて仕方がなかったからな。
だけど…母さんが再婚したのはちょうど俺が思春期の頃だったから、結局は、時期が悪かったんだろうな。
最初は父さんが出来たことが素直に嬉しかったのに、そのうちに俺だけが家族じゃないようなそんな気がして来たんだ。
美幸は父さんと母さんの子供だけど、俺は違う……
そのことで、父さんはもちろん、母さんも俺のことを邪魔だと思ってるんじゃないかなんて、おかしなことを考えるようになった。
高校を卒業して俺が一人で住みたいって言った時にも、二人共反対しなかった。
それで…あぁ、やっぱり、俺はこの家にはいらない人間なんだって思ったんだ。」

「和彦さん、それは違う!
それはきっと……」

和彦さんは、俺の言いかけた言葉を制するように片手を挙げた。



「……わかってる。
それが俺の気持ちを考えてくれてのことだったってことは、今なら良くわかる。
……だけど、その時はそれがわからなかったんだ。
なんせ、俺はまだ18のガキだったんだからな…」

そう言いながら、和彦さんは少し照れ臭そうに髪をかきあげ、窓の景色に目を移した。



「それから俺は日本にいることさえたまらなくなって、もっと遠くへ行こうと思い立った。
すぐには戻れない程遠くに身を置いてる方が、まだ気が楽だったんだ。
……写真の勉強がしたいとかなんとかは、結局は、家族から離れるための口実に過ぎなかった。
もちろん、写真は好きだし…勉強してるうちにその気持ちが強くなったのは本当なんだけどな。
そして、ルームメイトとの出会いが大きかった。
奴と出会ってから、俺は自分でも気付いていなかった本当の気持ちに少しずつ気付くことが出来た。
そして、その気持ちに少しずつ素直になることが出来て…それで、日本に戻って来たんだ。」

和彦さんの話に俺は黙って頷いた。
さっき、和彦さんが言いたかったのはきっとこのことなんだろう。
親の再婚は子供には少なからず影響をもたらす。
ひかりのお父さんがどれほど良い人であっても、きっとそれはどうしようもないことだったんだと思う。
しばらく経てば笑って話せるようなことでも、その時には絶望してしまう程うちのめされることだってある。



(そっか…和彦さんは、やっと乗り越えたんだ…)

そう思うと、俺の顔は自然に緩んだ。
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