赤い流れ星
こんな時間に訪ねて来る人なんていない。
宅配便の人もこんな時間には来る筈ないから……



……って、ことは……




ま、まさか……泥棒…?
いや、明かりがついてるから家に人がいることはわかるはず……
だったら…強盗…!?



私は、冷や汗をたらしながら咄嗟に物影に隠れた。
とにかく、庭の方から外へ逃げよう。
早く、鍵をあけなきゃ…!
焦ると、手がうまく動かない。
庭に面した戸の鍵がなかなか開かない。
早くしなきゃ…早く…!!



「美幸ーー
どこだーー?」



(……兄さん…?)



名前を呼ばれて、それが強盗ではないことを理解し、私は全身の力が抜ける思いだった。
まだがくがくしてる足をひきずっていくと、そこには兄さんとシュウの姿があった。



「シュウーーーー!」



私は無意識のうちにシュウの胸に飛びこんでいた。
シュウは、なにも言わず私の身体をぎゅっと抱き締めてくれた。
シュウの身体の温もりを感じたら、安心したのとびっくりしたのと嬉しい気持ちが一気に噴き出し、私はまた子供のように泣き出していた。
兄さんもいるのに……
泣いたら酷い顔になるのもわかってるから、泣きたくなかったんだけど、涙はどうしても止まらない。
息も苦しいし、頭も痛い。
なんだかもう頭の中がぐちゃぐちゃ過ぎて、私はすっかりパニック状態に陥っていた。



「美幸…シュウの服がびしょびしょだぞ。
いいかげん、泣き止め。」

「ご、ご、ごべんださい……」

兄さんに言われて、私はしゃくりあげながら、洗面所に向かった。
鏡に映った私の顔は、もう自分でも落ちこむくらい酷い顔で……
恥ずかしい…恥ずかし過ぎる…!
またこんな酷い顔をシュウに見られてしまった。
兄さんも、私がこんなに泣いてる所は今まで見た事がなかったはずだ。
きっと、呆れてる。
たった、三日離れただけでこんなに泣くなんてありえないもの……



そうだ…二人が急に帰って来るのが悪いんだ!
昼過ぎに来たメールでは、シュウも今日帰るなんて一言も書いてなかった。



でも、嬉しい……
シュウが帰って来てくれて、すごく嬉しい!
これからはまた一緒にいられるんだ…!
結局、あの話はどうなったんだろう?
兄さんは私の言ってることを信じてくれたんだろうか?



(あ…そういえば……
さっき、兄さんは「シュウ」って言わなかったか?
……うん、言った!
「シュウの服がびしょびしょだ」って言った!)




今までは、確か「君」としか言わなかった筈だから…
この変化は、良い兆しと取って良いのかな?
そんなことを考えながら、私は少しでもこの鼻の赤みが薄れ、瞼の腫れがひくように祈りながら鏡の前で時間を潰した。
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