赤い流れ星
当然のことながら、その場は重苦しい沈黙に包まれた。
兄さんもシュウもきっと私と似たような気持ちだったんだと思う。



「ほらほら。
そんな顔してないで早く食べろ。
……ケーキも買って来てあるからな。」

「えっ!ケーキ!?」

思わず反応してしまった自分が恥ずかしかった。
こんな状況で、なんでケーキなんかに心を動かしてしまうんだ……

そう考えると同時に、私は大切なことを思い出した。



「あ……あの…兄さん……
それで、兄さんはあの流れ星の奇蹟のことは……信じるの?」

「信じるというか……
嘘だと考えるより、真実だと考える方が自然だ。
現に、男性はあれから行方不明のままなんだ。
カリスタリュギュウス流星群後、願いが叶えられず失望して行方をくらましたということも考えられるが、旅館に二人で泊まっていることは間違いないし、その相手の風貌も亡くなった奥さんに酷似している。
俺達が確かめた様々な状況を考えると、やはり、カリスタリュギュウス流星群の奇跡は起きたのだと思える。」

「……だったら、シュウのことは?
シュウが私のオリキャラだってことは?」

私がそう問いかけた途端、兄さんの手が止まりそのまま箸を置いて、兄さんはゆっくりとお茶をすすった。



「美幸……
あの男性もおまえと同じ体験をしている。
カリスタリュギュウス流星群の赤い大きな星が自分に向かって飛んで来て、ぶつかると思ったのを最後に意識を失ったようだ。
アシーナは言っていた。
大きな奇蹟を授かった三人は、燃えあがる炎のようなパワーを全身で受け取った…と。
おそらく、三人は同じ体験をしているはずだ。」

「えっ!その人も私と同じ体験を…!」



そっか…
大きな奇蹟を授かった三人は、あの赤い流れ星にぶつかるような体験を……
……ん?
ってことは、私もその三人の中の一人ってことで、それって、兄さんはシュウのことを信じてくれたってこと?



「に、兄さん!
だったら、シュウのこと……」

「……勘違いするな。まだ完全に信じたわけじゃない。
シュウについてはこれからじっくり調べる。
だが……三日前よりは信じる方向に傾いた事は間違いない。
……でも、それが本当だとしたらものすごいことだよな。
だって、小説のキャラが実体化したなんて話、聞いたことがあるか?
世界初かもしれないぞ。
それに、おまえが書いてるのがファンタジーでなくて良かったとつくづく思うよ。
これが、もしも、悪魔とか獣人とかドラゴンだったら、もっと大変なことになってたぞ。」

そう言うと、兄さんは小さく笑った。
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