赤い流れ星




次の日からまた元通りの日々に戻った。
シュウの作ったお弁当を持って、自転車の後ろに乗ってバス停に送ってもらうことが、どんなに幸せなことかと、私はあらためて感じることが出来た。

不安がなくなったから、バイト中もミスをしなくなった。
でも…こんなことで、動揺してしまうのはよくない。
まぁ、シュウが家を空けることはそうそうないとは思うけど、そのくらい、平気でいられるようにしないと……







「それで、兄さんとは旅行中もうまくいってたの?」

「まぁな。」

数日後、兄さんはちょっと出かけてくるといって家を出た。
私とシュウを二人っきりにしてくれたってことは……二人の仲を許してくれたってこと?



「和彦さんと一緒に旅してて思ったんだけど……
もしかしたら、俺って和彦さんがモデルになってるんじゃないのか?」

「えっ!?そ、そんなつもりはなかったけど…なんで?」

「だって…一緒にいて感じるんだよな。
なんか、考え方とか行動の仕方とか…俺に似てるなって。
あ…逆か。
俺が、和彦さんに似てるのか……」

「そ、そう?」


自分では意識してなかったけど……
言われてみればそうなのかな?
そういえば、シュウの好きそうな服を見てた時、父さんが兄さんが好きそうだって言ってたし、体格も同じくらいだし……
そっか…私、無意識に兄さんをモデルにしてたんだ……



「どうかした?」

「いや…シュウに言われるまでそんなこと考えたこともなかったけど……
言われてみたらそんなような気もするなって……」

「……ま、そういうこともあるよな。
身近過ぎて気付かないようなことってさ。
でも、どうせなら、和彦さんよりももっと優秀な人間にしてほしかったな。
俺、和彦さんには何も適わないって感じでさ。
……なんか、自信なくしたぞ。」

「やっぱり…
そっか…
私、なんでも出来る兄さんや母さんに憧れながら、でも、それが寂しくもあったじゃないかって思う。
私と違い過ぎるから……
だから、シュウのことは少しレベルを落としたのかも……」

「酷いな、それ……
俺は、和彦さんの低レベルバージョンってことなのか!?」

「ち、違うって!
そういう意味じゃないって!」

私は慌てて否定したけど、シュウは冷たい目をしてそっぽを向いた。



「シュウ…怒った?」

シュウは、何も返事をしてくれなかった。



「シュウ……」

「ばーか。
そんなことくらいで怒るかよ!」

シュウは、私の額を指で突いた。



古い!古いぞ!その仕草!
なんか、昭和のドラマみたいだ!
そんなことを考えると、私はおかしくなって噴き出してしまった。
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