赤い流れ星




「た、ただいま!」

私を出迎えたのは、明らかに怒ってる様子の母さんと、その少し後ろにいる落ちこんだ様子のシュウ。



「あんたって子は……!」

突然、頬に向かって飛んできた母さんの手に、私は呆然としてなにも言うことが出来なかった。



だって…母さんに打たれたのなんて、大きくなってから初めてのことで……
小さい頃も頬を打たれたことなんて一度もなかった。



「しっかり話を聞かせてもらいますからね!」

「……はい。」



込み上げて来た涙を拭って、私はまるで死刑囚にでもなったような気分で母さんの後に着いて行った。
シュウは、黙って私の背中を支えてくれた。



「母さん、失望したわ……
あんたがこんなことをする子だとは、思ってもみなかった。」

母さんの唇はわなわなと震えてた。
母さんは相当怒っている。
いまだかつてないくらいに怒ってることが、私にはとてもよくわかった。



(兄さん、早く帰って来て!)

私は心の中で強く祈った。
タクシーが家に近付いてきた頃、私は兄さんのことを思い出して電話をかけた。
だけど、出なかったから、伝言を残しておいた。
兄さんが今どこにいるのかわからないけど、今、頼りになるのは兄さんだけだから、私は懸命に祈った。



「よくも母さん達を騙してくれたわね。
それも、和彦までいっしょになって……
一体、どういうことなの!?」

母さんがこれだけ怒ってるってことは、シュウがただの兄さんの友達だとは思ってないってことだ。
ってことは、もしかして、シュウは本当のことを喋った?
いや、本当のことって言っても、まさか自分が小説から抜け出て来たことは言ってないと思う。
だとしたら、私の彼氏だと言ったってこと?
それは、一番まずい。
きっと、最初兄さんが推測したのと同じように、私を騙して金蔓にしてる悪い男だと思われるに決まってる。
母さんの手前、シュウにどんなことを話したか訊く事も出来ず、私は答えに詰まった。

とにかく、言い訳よりもなによりも謝るのが先だと思い、私は母さんに頭を下げた。



「ごめんなさい、母さん。」

「ごめんなさいじゃないわよ!
あんた、この男に騙されてるのがわからないの!?」

やっぱりだ。
母さんは、兄さんと同じように思ってる。
シュウも、なんで馬鹿正直に答えるんだ!
< 128 / 171 >

この作品をシェア

pagetop