赤い流れ星
「あ…あの…
こんな時になんですが……めしでも食べませんか?」

「え……?」

「ひかり…腹減っただろ?
お母さんも、お腹がすいてらっしゃるんじゃないですか?」

「あなたに、お母さんなんて言われる筋合はありません!」

「す…すみません。」

シュウは、謝りながらも席を立ち、私の肩をそっと叩いた。



「すぐに用意するからな。」

「私はいりませんからね!」

シュウは私に言ってるのに、母さんが横から口を挟んだ。



「シュウ…私も手伝うよ。」

「美幸!」

立ちあがった私の背中に母さんの苛立った声が突き刺さる。
だけど、私はそれを無視して台所へ行った。



***



「……大丈夫か?」

「うん、大丈夫。
それより、シュウは大丈夫だった?
母さんに酷い事言われたんじゃない?」

「……俺なら大丈夫だから。
警察に通報されなかっただけでもありがたいよ。」



ってことは、通報されそうになったってこと?
そうだ!
まさか、一人にしてる間に警察に電話とかしないか?



ふと、頭に浮かんだ恐ろしい想像に、私が母さんの様子を見ようとしたら、ちょうど母さんが台所にやって来た。
そして、椅子に腰掛けて、腕を組んで私達のことを監視するようにみつめてた。
私は、その視線を感じながらも、気付かないふりをしてシュウの手伝いを続けた。



(……あれ?)



居間で聞き慣れた着信音が鳴っている。
シュウと私は同じ曲にしてるけど、私は普段はバイブにしてるから、あれはシュウの携帯。



「シュウ、携帯……」

「あ、あぁ、じゃ、ここ、頼むな。」

シュウはコンロの前を明け渡し、居間に向かった。
台所に、母さんと二人っきりでいるのはとても気詰まりだ。
母さんはなにも話さず、私ももちろん何も話さない。



(それにしても、一体、誰が…?
……あ…!)



野菜を炒めながら、私はその電話が誰からなのかを悟った。
私以外にシュウの携帯番号を知ってる人は一人しかいない。
兄さんだ。
留守電を聞いて私に電話をかけたんだろうけど、私が出なかったからきっとシュウにかけたんだ!

そう思うと、私はようやく希望の光が見えたような気がした。
< 130 / 171 >

この作品をシェア

pagetop