赤い流れ星
「……だいたいのことは知ってるわよ。」

母さんの苦しい反論に兄さんは俯いて失笑した。



「あいつとは、もう何年も前にSNSで知り合ったんだ。
好きな音楽の趣味がよく合って、日記のコメントやメールでそんなことをやりとりするうちにだんだん親しくなって、音楽以外のことも話すようになったんだ。」

「あ…和彦さん……」

ちょうどその時、シュウがお風呂から上がって来た。



「美幸、シュウに冷たいものでも出してやれよ。
あ、アイスがまだあったんじゃないか?
シュウ、俺は母さんと話があるから、おまえは美幸とアイスでも食べて早く寝ろ。」

「はぁ…」

兄さんは私に小さく目配せした。
シュウは、まだ事情がよくわからないようだったけど曖昧な返事を返し、私達は台所に向かった。







「どういうことなんだ?」

「多分、兄さんは自分一人で母さんを説得するつもりなんだよ。
それとね、よくわからないけど、兄さんに連絡したことは内緒なんだって。
それから、兄さんはシュウとは元々友達で、好きな音楽を通してSNSで知り合って親しくなったって言ってた。」

「なにか作戦があるんだな?」

「そうみたい。
とにかく今は兄さんに任せといた方が良いと思うよ。」

私達は声を潜め、今の状況について話した。



「今のうちに聞きたいんだけど、母さんには何を話したの?」

「なにって…
とにかく、俺が出たら『あんた誰!他人の家でなにしてんの!』って言われたから、ちょっと事情があってここに住んでるって言ったんだ。
そしたら、美幸はどこだって聞かれたから、その時にやっとお母さんなんだって気が付いて、咄嗟にバイトに行ってるって言っちゃったんだ。」

「もぅ~…なんでそんなこと言うのよ!」

「俺も言ったあとでまずいって思ったけど、ひかりのお母さんすごい剣幕だったから、俺も動転してたんだよ…」

それは仕方ないことだと思う。
あの母さんの怒り方を見てたら、そりゃあ冷静になんて応対出来ないよ。



「それで、その他には?」

「いつからここにいるのかとか、あんたは働いてないのかとか、生活費はどうしてるのかとか…」

「……それで、シュウはそれに正直に答えた?」

シュウは即座に頷いた。



だめだ、こりゃ。
働きもしなければ生活費も入れてないような男のことを母さんが認める筈がない。
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