赤い流れ星




「来なくて良いって言ってるのに……」

兄さんも車に乗り込んだことで、母さんはとても不機嫌だった。
でも、私は当然母さんと二人っきりよりも兄さんが来てくれた方が心強い。
兄さんがいてくれたら、母さんも無茶なことは出来ないもの。
バイト先に着くまで、車の中はほぼ無言でとてもいやな雰囲気で……
ようやく着いて車のドアを開けた時には、どれだけほっとしたことか……



「じゃ、行って来るね。」

「あぁ、頑張ってな。」

私と兄さんはそんな短い言葉を交わしただけだった。
それは、もちろん、私達を監視するようにして母さんが立っていたから。
ショッピングセンターはまだ開いてないから、従業員しか入れない。
兄さんは、近くの喫茶店で時間を潰すと言っていた。

ずっと傍に母さんがいたせいで、結局、昨夜、兄さんと母さんがどういう話をしたのかは聞けず仕舞いだったのが気がかりだけど……
母さんがいる以上、私にはそれをどうすることも出来なかった。



とにかく、母さんのことは兄さんに任せて、今は仕事に専念するしかない。



(よしっ!頑張るぞ!)

私は無理矢理自分に気合いを入れて、店に向かった。


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