赤い流れ星
とにかく、シュウがいることがバレてしまった以上、なんとかして美幸とシュウの交際を認めさせるしかない。
母さんさえ認めれば、父さんはそう反対はしない筈だ。
そのためには、出来れば母さんが父さんに話す前に、シュウの印象を少しでも良くしておきたい所だが、ここまで悪印象を持たれてしまった今、一体、どうすれば良いのやら……



「あの子、どんなお店でバイトしてるの?」

「アニメや漫画やゲームを取り扱ってる…ほら、美幸の好きな店にアニメさんってあっただろ?
あそこだよ。」

「アニメさん?
あの子、やっぱりまだそんなものが好きなの……」

「まぁ、良いじゃないか。
それであいつの気持ちが明るくなれるなら……
でも、昔みたいにそういうものにどっぷり浸かってるってわけでもないんだ。
最近は早起きしてるから夜も早く寝てるし、寝るまでの間にちょこっと見てるだけみたいだ。
あいつ…昔に比べてすごく健康的になっただろ?
シュウが栄養のこと考えて食事は全部手作りしてくれてるし、働いてるし、夜中にお菓子をバリバリ食べるようなこともなくなったから、無駄な贅肉もなくなって身体が楽みたいだよ。」

「きっと、あの男は以前も誰かのヒモみたいな暮らしをしてたんだわ。」

「……母さん、なんでそう悪い方に……」

そう言いかけて、俺は気付いた。
そうだ…きっと、母さんは、シュウの中に俺の親父を見てるんだ。
親父は、若かった事もあるだろうけど、俺が産まれてからも父親としての自覚が目覚めなかったらしい。
いや、実際の所はどうだったのかわからないが、母さんにはそう見えたようだ。
バイトを始めてはすぐにやめ、家でごろごろしていたという。
ただ、俺の世話をしてくれたり、可愛がってはいてくれてたらしいけど、友人からの誘いがあればすぐに出て行き、なによりも母さんはそんな甲斐性のないおやじのことがいやでたまらなかったという話を、ずいぶん昔に聞いたことがあった。



(……そうか。
母さんは、美幸が自分と同じ過ちをしてしまうと思ってるんだ。
シュウと一緒にいると、美幸が不幸になると思いこんでるんだ……)



だとしたら、余計に事態は深刻だ。
一筋縄ではいかないぞ。
何か、良い手はないものか……
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