赤い流れ星
「もうそろそろお店も開いてるんじゃないの?」
「え?」
不意に声をかけられ、時計を見ると、いつの間にかショッピングセンターのオープン時間が過ぎていた。
「そうだね。
じゃ、行こうか。」
俺達は、喫茶店を出て、美幸の働くアニメさんに向かった。
*
「ほら、あそこ…!」
俺は、母さんにアニメさんの場所を教えた。
アニメさんは硝子張りだから、店の中の様子がよくわかる。
店内はまだお客も少ないせいか、美幸は棚の本をチェックしていたかと思うと、店の奥にひっこんだり、持って来たポスターを貼ったりと、忙しく動き回っていた。
俺も働く美幸を見たのは初めてだったが、家にいる時よりもずっとてきぱきと…そして、とてもしっかりした顔つきで働いているのが印象的だった。
「よくやってるじゃないか…」
母さんは何も答えなかったが、ただ小さく頷いた。
きっと、母さんにも美幸が一生懸命に、そして、やりがいを感じて働いていることがわかったんだと思う。
「ちょっと、店長さんにご挨拶して来るわ。」
「だ、だめだって!
見るだけって言っただろう!」
「ご挨拶だけよ!」
母さんは俺の手を振りきり、店に入って行ってしまった。
俺も一緒に行きたい所だったが、店の人達はシュウのことを兄だと思ってるらしいから、俺が行ったらややこしいことになる。
そう思い、俺は物影に潜んだまま、母さんがおかしなことを言い出さないことを祈りながら見守った。
店に入った母さんにすぐに気付き、美幸は酷く驚いたような顔をしていた。
それから、母さんと美幸はレジにいた年配の男性の所に行って、なにやら話をしていたが、三人共にこやかに話している。
しばらくして、出て来た母さんは機嫌の良さそうな顔をしていて、美幸も同じように笑って手を振っていたから、問題はなかったのだろう。
俺もようやくほっと胸をなでおろした。
「母さん!」
「なに、あんた…そんなところで何してたの?」
「なにって、母さんを待ってたんだよ。」
「待たなくて良いわよ。」
「何言ってんだよ。
そういうわけにはいかないだろ?」
「私はもう帰るわ。」
「えっ!?帰るって……家に?」
「当たり前でしょ。」
母さんはそう言うと、ずんずんと駅の方へ向かって歩き出した。
「母さん、ちょっと……」
「なによ。次の電車を逃したら遅くなるのよ。
用があるなら電話ちょうだい。
じゃあ、美幸のことは頼んだわよ。」
信じられない想いだったが、母さんはさっさと切符を買うと、手を振って改札を通り抜けた。
美幸がちゃんと働いていることを確認して気が変わったのか……
俺は、狐につままれたような気分だった。
「え?」
不意に声をかけられ、時計を見ると、いつの間にかショッピングセンターのオープン時間が過ぎていた。
「そうだね。
じゃ、行こうか。」
俺達は、喫茶店を出て、美幸の働くアニメさんに向かった。
*
「ほら、あそこ…!」
俺は、母さんにアニメさんの場所を教えた。
アニメさんは硝子張りだから、店の中の様子がよくわかる。
店内はまだお客も少ないせいか、美幸は棚の本をチェックしていたかと思うと、店の奥にひっこんだり、持って来たポスターを貼ったりと、忙しく動き回っていた。
俺も働く美幸を見たのは初めてだったが、家にいる時よりもずっとてきぱきと…そして、とてもしっかりした顔つきで働いているのが印象的だった。
「よくやってるじゃないか…」
母さんは何も答えなかったが、ただ小さく頷いた。
きっと、母さんにも美幸が一生懸命に、そして、やりがいを感じて働いていることがわかったんだと思う。
「ちょっと、店長さんにご挨拶して来るわ。」
「だ、だめだって!
見るだけって言っただろう!」
「ご挨拶だけよ!」
母さんは俺の手を振りきり、店に入って行ってしまった。
俺も一緒に行きたい所だったが、店の人達はシュウのことを兄だと思ってるらしいから、俺が行ったらややこしいことになる。
そう思い、俺は物影に潜んだまま、母さんがおかしなことを言い出さないことを祈りながら見守った。
店に入った母さんにすぐに気付き、美幸は酷く驚いたような顔をしていた。
それから、母さんと美幸はレジにいた年配の男性の所に行って、なにやら話をしていたが、三人共にこやかに話している。
しばらくして、出て来た母さんは機嫌の良さそうな顔をしていて、美幸も同じように笑って手を振っていたから、問題はなかったのだろう。
俺もようやくほっと胸をなでおろした。
「母さん!」
「なに、あんた…そんなところで何してたの?」
「なにって、母さんを待ってたんだよ。」
「待たなくて良いわよ。」
「何言ってんだよ。
そういうわけにはいかないだろ?」
「私はもう帰るわ。」
「えっ!?帰るって……家に?」
「当たり前でしょ。」
母さんはそう言うと、ずんずんと駅の方へ向かって歩き出した。
「母さん、ちょっと……」
「なによ。次の電車を逃したら遅くなるのよ。
用があるなら電話ちょうだい。
じゃあ、美幸のことは頼んだわよ。」
信じられない想いだったが、母さんはさっさと切符を買うと、手を振って改札を通り抜けた。
美幸がちゃんと働いていることを確認して気が変わったのか……
俺は、狐につままれたような気分だった。