赤い流れ星




「さて…明日から、家探しだな。
住宅情報誌集めて来たから、見てみな。」

いつの間にか兄さんは何冊かの住宅情報誌をみつけて来ていて、それらをばさっとテーブルの上に置いた。



「俺もネットで探してみるよ。」

兄さんはそう言って慣れた仕草でパソコンを開く。



そう広くもないビジネスホテルの一室に集まって、私達は新しい家を探した。
兄さんはそんなに気にしなくて良いと言ってくれてるけど、家賃のことはやっぱり重要だ。
私がどのくらい稼げるかわからないし、兄さんは兄さんで暮らしていかなきゃならないんだから。
それに、私が働くって言ったってすぐに仕事が見つかるかどうかもわからないんだし、安いに越したことはない。



あたりの情報については何もわからないんだから、とにかく家賃と間取りだけで選ぶことにした。
言葉の雰囲気が今までとはずいぶん違うことで、私は遠くに来たことを実感した。
見ず知らずの土地に不安は大きいけど……でも、シュウと一緒ならきっとうまくやっていけるはず。
これからの二人の暮らしは、今までとは違ったものになるかもしれない。
今までの友達みたいな関係から…一歩踏み出せるかもしれない。
だって、私はもうシュウと一緒に人生を生きていく覚悟が出来てしまったんだもの。

恥ずかしいような怖いような気持ちを胸に、私は新居を探し続けた。



「ねぇ、シュウ、ここなんかどう?
畑もついてるらしいし、家賃も安いよ。
バス停までは徒歩15分ってあるから、前より便利になるね!」

「そうだな。
良いかもしれないな。」

シュウのその言葉にはまるで気持ちがこもっていなかった。
考えてみれば、シュウは家を出てからずっとこんな感じだ。
いや…どのあたりに行きたいかと聞いた時にも、シュウはわからないからと言って全く自分の意見は言わなかった。
やっぱり、自分のせいでこんなことになったと悩んでいるのか……
シュウの態度が気になりつつも、私にはそれをどうすることも出来ず、ただいつもよりわざと元気に振舞うくらいのものだった。
< 153 / 171 >

この作品をシェア

pagetop