赤い流れ星




「おいしかったね!
見た目も可愛かったし……」

「そうだな。
けっこうボリュームもあったからおなかいっぱいになったよ。」

兄さんは用事がまだ片付かないとのことで、夕食はシュウと二人で食べることになった。
きっと兄さんは私とシュウも思い出作りのために気を利かせてくれたんだろう。
そんな余計な気を遣わなくて良いのに……
私は三人で一緒に食べたかったのに……



夕食後、私達はパレードを見に行った。
もう前の方の席は埋まってて後ろの方しかなかったけど、そんなことは別にどうだって良い。
今日の朝からずっと遊んでたことだって、私はうわの空だったんだから。
だけど、そんなことはおくびにも出さず、私はパレードを楽しみにしているふりをした。
シュウもそれは同じだったようで、私達は二人してパレードを待ちわびるカップルを演じてた。



しばらくすると、少し離れた所で大きな歓声があがり、軽やかな音楽と共にあたりが煌びやかなライトで明るく照らし出され、飾ったキャラクターやダンサー達のパレードが始まった。



「わぁ!綺麗だね!」

「すっごいな!」

パレードを見てる皆が弾けるような笑顔だ。
パレードのイルミネーションと同じようにきらきらした瞳で微笑んでいる。
きっとこの中には、私達と同じように心に悩みを抱えてる人もいるだろうけど、今だけはみんなそのことを忘れて夢の世界を楽しんでるんだろうね。
うん…私も少しは楽しまなきゃ…!




「わぁ~い!」

私は車の上のキャラクターに向かって手を振った。
アニメや映画でお馴染みのキャラクターが次々に姿を現す。



(そうだ、シュウも彼らと同じようなもの…ただ…ずっと精巧で…本物だってこと……)



それはとても不思議な感覚だった。
私はそのことをどう理解して良いのかわからなくなって…その想いを頭の中から放り出した。







「兄さん、遅いね……」

「もう来るさ。
閉園までには迎えに来るって言ってたから。」

パレードが終わると、客足はずいぶんと少なくなった。
ベンチに腰掛け、ふと携帯をのぞいたら家からの着信が入ってた。
パレードの音に紛れて気付かなかったけど、ついに父さんと母さんは私達が逃げたことを知ったんだ。
私は苦々しい想いで携帯を閉じた。



「どうかした?」

「う、ううん、兄さんから電話入ってないかと思って見ただけ……
本当に遅いよね。」

「きっと、俺達のことで忙しくしてくれてるんだろう。」

「そうだね……」

心配かけたくなかったから。親からの着信のことはシュウには言わずにおいた。
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