赤い流れ星




「ひかり、まだ起きてる?」

部屋に戻り、ゆっくりと風呂に浸かった俺はひかりに電話をかけた。



「起きてるよ。」

「……じゃあ……ちょっと話でもする?
俺の部屋に来ても良いし、このまま電話でも良……」

「ごめん~!
今日は楽しい事がいっぱいあったから、ひさしぶりにブログ書きたいんだ。
朝から動きまくって疲れたし、寝てしまう前に書き上げたいから……」



今日はあんなことがあったからきっと部屋に来てくれる…そう思ってた俺の予想は完全に裏切られた。
ひかりは俺の気持ちなんか知るはずもなく、とても陽気にはしゃいでいた。
そのことで、俺は、パークでのあの甘い一時がまるで幻だったような…とても切ない気持ちになった。
そういえば、ひかりはあの後も特に照れた様子も見せず、いつもと少しも変わらない。
和彦さんがいたせいかとも思ったけど、電話でもまるでそんな様子がない。



「……そっか。
じゃ、仕方ないな。」

「書きあがったら見てね!
本当は私達のラブラブな画像もアップしたいところだけど、さすがにそれは無理だね。」

「あ…ひかり!
今、一緒に二人で映さないか?」

「なんでよ。
こんな所で、しかもこんな時間に……
私もう浴衣着てるし、無理!」

ひかりはそう言って笑った。
最後にもう一度だけひかりの顔を見て、二人の画像を撮っておきたいという切実な俺の望みはあっさりと断られた。



「……そうだな。
わかったよ、
変なこと言ってごめん。じゃ……おやすみ、ひかり。
……大好きだよ。」

「おやすみ、シュウ。
私も大好き……」

これで良かったんだ……
あと一度とか、画像とかそんな未練たらしいことを言ってたら、ますますひかりのことが忘れられなくなる。
断られて良かったんだ…きっと……

俺は自分にそう言い聞かせ、そっと携帯を閉じた。
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