赤い流れ星




ほっとした。
とりあえずどちらの部屋ももぬけの殻だったから、最悪の事態にはならなかった。
だが、荷物はそのままなのに、二人の姿はどこにもないというのはどういうことなのか……
俺は昨夜はほとんど眠っていない。
二人が示し合わせて部屋を出たら、きっと気付くはずだが、それらしき物音は聞かなかった。
それに、どこに向かったにしろ、出て行くのに携帯も財布も持っていかないのはどうにも不自然だ。
それともう一つ、美幸の携帯がシュウの部屋に転がっていたことが気になった。

着信は、俺とシュウと家と後はアニメ関連のメルマガの配信だけ。
送信も、俺とシュウあてだけだった。



(……これは…)



俺は、保存メールに俺あてのメールを発見した。



タイトルは「兄さんへ」
時間は、今から二時間近く前。
そこに書いてある内容を見て、俺の鼓動は早鐘を打ち出した。



美幸は気付いていた。
シュウが、美幸のことを考えて一人で出ていこうとしていることを。
そして、多分、シュウはもう二度と美幸には会わないつもりなんだということを感じたと。
だから、美幸は賭けに出た。
自分の人生を賭けたとんでもない賭けに。



「もしも、私とシュウがいなくなっていたら、成功したと思って下さい。
兄さん、今まで本当にどうもありがとう。
父さんや母さんには、私はシュウと幸せになるために旅立ったことを伝えて下さい。
もしかしたらもう二度と兄さんや父さんや母さんには会えないかもしれないけど…それでも、私は完全に諦めたわけではありません。
いつか、また会える方法がみつかるかもしれない。
その日まで、父さんと母さんのことをどうぞよろしくお願いします。」



(どういうことなんだ!?)



美幸のメールには「私のホムペを見て」と書いてあるだけだった。
俺は、早速、美幸のホームページにアクセスした。




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